2023年5月30日、成蹊大学の伊藤昌亮先生にゼミにおいでいただきました。先生のご著書「炎上社会を考える(中公新書ラクレ)」を題材に、4年生の冨澤桃子さんが、自身の研究テーマ「「生きづらさ」表現の広がり」をベースに炎上社会との関わりを提起するプレゼンを行い、そこからゼミで取り上げることの多い「生きづらさ」や「周縁性」と、伊藤先生の次の本のテーマとの関わりについて皆で議論を交わしました。「生きづらさ」という表現は、「マイノリティ」など個別属性化しづらい困難や、一般の人が抱える弱さを表現する上で都合のいい表現で、また見下した感じもないので、おそらくメディアの方も使いやすい言葉なのだろうと思われます。これまで私が研究で取り上げてきた依存症の方や発達障害の方などが抱える困難も、この用語一言でまとめてうまく言い表せます。しかしその一方、誰もが何かしらの「生きづらさ」を感じがちな現代では、弱者とは誰を指すのかが見えづらくなっている現状もあり、そこから制度で救われる弱者へのバッシングへとつながっていえる側面もあるのではないでしょうか。伊藤先生には大変豊富な歴史的知識から多面的にご指導いただきました。お忙しい中、どうもありがとうございました。

生きづらさについては以下の論文が面白いです。ご参考まで。

藤川奈月(2021)「生きづらさ」を論じる前に : 「生きづらさ」という言葉の日常語的系譜