International Association for Media and Communication Researchの大会に参加し、Funding Public Interest Journalism in Japan, Launching Hospital Radio in Japanという2本のペーパーについて発表しました。対面は4年ぶり (オンラインになってしまったナイロビやタンペレが残念、、、) で、久しぶりの発表に緊張しましたが、今回は質問も多く寄せられ、また今後の研究について台湾や香港の研究者たちと打ち合わせもできてとても有意義な出張となりました。

私自身の関心やIAMCRの姿勢も影響しているのでしょうが、今年はデジタル社会におけるポリティカル・エコノミーへの関心が高かったように思います。特にChristian Fuchs氏の基調講演は、これまでぼんやりと感じていたメディア・ネット企業や社会に対しての疑義がクリアにデータとして表されるもので、サウナのように暑い講義室で延々とメモを取りました。もちろん、それで今後の社会をどうしていくのか、という問いは残されたままですが、プラットフォーム企業に関する告発だけでなく、メディア企業がいかにエネルギーを消費しているかなど非常に刺激的な視座と内容でした。ウェブサイトを見ると、ポッドキャストなどさまざまなメディアで情報発信をされているようです。日本に訳書がないのは残念。

会場となったリヨンは熱波到来でとても暑く、35度以上の日が続きました。大学も地下鉄もエアコンがなく(あってもほとんどきいていない)、よくこんなところで我慢できるなと彼らを尊敬すると同時に、ヨーロッパに熱波が来ると死者が出たり、また温暖化問題に熱心だったりする理由が分かった気がします。また30年ぶりに比較的長期間(といっても10日程度)滞在したわけですが、フランスは、随分変化したなと感じます。移民、観光客が激増し、一方で、街中のマナー(犬のフンや車の駐車、地下鉄の利用など)が向上し、店やホテルの従業員さんの応対がたいへん親切になったように感じます。

また乗継のパリにもリヨンにも、6月27日に起きた北アフリカのナエル少年射殺をめぐる暴動の影響が色濃く残っていました。ガラスが破られ、スーパーはまだ整理中のところもあり、街中には銃を持った警察官や兵士がたくさん。この暴動に関しては、フランス版 Black Lives Matter問題だとか、ソーシャルメディアを介した単なる若者の暴動だったとか、解釈も定まっていないようですが、暴動の最中だったらやはり相当こわかっただろうとも思いました。

円安の影響か国力が落ちたのか、フランスの物価は北欧並みに高く感じられ、なかなか西欧には行きづらくなりそうですが、やはり身体を日本から引き剥がすことで、見えてくること、考えることもやはり多いと感じた出張でした。