今年、1通のメールから、興味深いお仕事を受けました。スイス公共放送協会傘下で10の言語で情報を発信するSWI swissinfo.ch (スイスインフォ)から、社会的包摂に向けた記事審査に協力してほしいという内容です。スイスインフォの記事はいつも面白いと思っていたので、楽しみにしつつお受けしました。

スイスはスイスドイツ語、フランス語、イタリア語が混在する国ですが、インクルーシブ(包摂的)な言葉選びを徹底しているか、とりあえずはヨーロッパ言語において、人を意味する男性名詞の徹底排除を目指しているようです。他にも配信した記事全ての文・写真が男女のバランスに沿っているか、記述の背景として、男女や人種のステレオタイプを無意識に想定していないか、無駄にアイキャッチとしての女性のイメージを利用していないかなど定期的に評価を受けることを決めたようです。英BBCが2017年に始めた「50:50 Equality Project」を参考にした取り組みだそうで、公的資金に基づく公共メディア、国際的な報道機関という矜持から、今年からこの10の言語全てに対して用語チェックが行われることになりました。

10の言語に今も日本語が入っていることをそっと喜びつつ、何と言っても元記事がそうしたリベラルなスイスインフォの記事な訳で、そんなに問題点はないのでは?と思っていましたが、彼らが要求するレベルでよくよく精査してみると、いろんなところに「言い換え可能」な用語が見つかります。少年兵(子ども兵と言い換え可能。少女もいる)、母国(出生国、祖国)、青少年(若者)などなど、、、。またこの写真、いる?というような、アイキャッチ的写真やイメージも見つかります。そして何より、日本語の記事には「過度な英単語の使用」が目立ちました。日本に入っていない概念、あるいは訳すと差別的意味を持ってしまうから訳せない用語がとっても多いので仕方ないといえば仕方ないのですが、ヨーロッパで普通に議論されているレベルのことが十分日本語にできておらず、安易に輸入してしまっていることを実感しました。

審査の仕事を終えて、地下鉄に乗ろうとすると、、、いつもの車内広告がずいぶん違って見えました。

関心のある方は以下をご参考に。これ以外にも永世中立国を掲げるスイスからの記事、とても勉強になります。

SWI swissinfo.chがIBCソーシャルインパクト賞を受賞