終了報告:
今日の学会では、記者クラブの現状とハイパーローカルから見た際の課題、パブリック・インフォ(公共公開情報)や基礎的公共情報に関する認知を広めていく必要性、アーカイブ化、メディア側の立場を尊重してくれるメディアロイヤーの必要性など、これまでの議論では論じられてこなかった視点をいただきました。また、山田健太先生からは、CALL4という公共訴訟をサポートするためのウェブサイト(団体)をご紹介いただきました。とても興味深いのでシェアさせていただきます。具体的な解決策等については、メディフェス2024でも詰めていきたいと思いますのでよろしくお願いします!
今週末、メディア学会で「ニュース砂漠と地域ジャーナリズム Ⅲ – 「ニュース奈良の声」を事例として」というセッションを担当します。新聞等の購読率の低下、広告のデジタル化、地域メディアのエンタメ化などによって厳しい状況にある地域ジャーナリズムですが、地域社会において民主主義を維持していく上でとてもたいせつな営みです。今後の持続可能な地域ジャーナリズムについて、会場の方にもご参加いただきながら、ディスカッションを進めたいと存じます。非学会員の方は3000円ですが、他にも注目のセッション、シンポジウム等ありますので、ぜひご参加ください。お待ちしております。
朝はジェンダー研究を中心としたセッションの司会もします。なんかちゃんとコメントできるか自信がないので、ご専門の方、ぜひご参加いただき、コメントしてください!
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セッション詳細
ニュース砂漠と地域ジャーナリズムⅢ
―「ニュース奈良の声」を事例として
司会者:小川明子(立命館大学)
問題提起者:浅野善一(「ニュース奈良の声」代表、記者)
討論者:山田健太(専修大学)
(企画:ジャーナリズム研究・教育部会)
ニュース砂漠」と呼ばれる現象は、日本国内でも広がりつつある。新聞やテレビなどマスメディアが張り巡らせている取材網は、支局の閉鎖などに伴って手薄になりつつある。地域のニュース、とりわけ環境監視活動が減少すれば、民主主義社会そのものが危機に瀕すると言っても過言ではないだろう。その一方で、インターネットやソーシャルメディアの発展により、マスメディアとはその成り立ちも組織も異なる、「ハイパーローカル・メディア(ハイパーローカル・ジャーナリズム)」と呼ばれる、市町村レベルのニュースを扱うウェブメディアが誕生しつつある。
こうした現状と課題を共有するワークショップ「ニュース砂漠と地域ジャーナリズム」は、昨年度の春季研究大会では「屋久島ポスト」(鹿児島県)、同秋季は「NEWS つくば」(茨城県)、それぞれからの現状報告と問題提起を踏まえ、議論を重ねてきた。そこでは、財政基盤をいかに確立するか、取材・編集の人材をどう確保するか、ウェブサイトをどのように作り上げ維持するかなど、運営面の課題が示され、それらの壁を乗り越えるための取り組みが報告された。他方、ジャーナリズム活動としては、マスメディア中心で構成されてきたシステムのもとで、さまざまな制約が課せられている現状も確認された。例えば、地元自治体や議会の記者クラブに加盟できず、取材源へのアクセスに制限があることや、取材者自身が狭い地域に暮らす一市民でもあるために、不適切な行政運営や議会運営に対して批判的な報道をすることの難しさなど、ハイパーローカル・メディア固有の問題がのしかかっている状況も共有された。
今年に入り、鹿児島県警の一連の不祥事が県内外を揺るがせている。圧倒的な取材力で県警の問題を次々と明るみに出したのは、地元紙や放送局ではなく、福岡に拠点を置くウェブメディア「ハンター」だった。「内部告発」の性格を有する情報を、一手に取り込むような状況が生まれている。「ハンター」をめぐっては、県警による事務所への家宅捜索のあり方が取材源匿権の侵害に当たるという観点からも注目を集めた。こうした動向を踏まえ、3 回目となる本セッションでは、奈良県内に拠点を置く「ニュー
ス 奈良の声」を事例に、ハイパーローカル・メディアの現状と課題に、あらためて焦点を当てる。代表の浅野が問題提起者として、現場の状況と課題を詳らかにする。「ニュース奈良の声」は 2010 年にサイトを開設。奈良県内を取材対象エリアとして、当局の発表には依存しない、独自ニュースに力点を置く。市民の目線から、従来のメディアには伝えきれない課題を掘り起こしている。代表を務める浅野の持論は「マスメディアの対極にある小さなメディアだからこそ、生まれる視点がある」。こうした取材・報道姿勢が「地域に根ざすメディアの模範例」として評価され、2021 年に「ジャーナリズム X アワード」を受賞している。
これを受けて、討論者として、マスメディア産業に詳しい山田が、各社の取材網が縮小傾向にある現場をあらためて確認したうえで、「ニュース奈良の声」などのハイパーローカル・メディア成立の条件や課題について多角的に考察を試みる。行政機関、とりわけ捜査機関と地域メディアとの関係、記者クラブの問題などについても、表現の自由の観点から議論を深めようとする。
ジャーナリズム全体として、直面する民主主義社会の危機にどう向き合うのか。質疑と意見交換の時間を十分確保し、参加者全員による活発な議論を期待している。