2023年度放送文化基金の助成を受けて、報道におけるポッドキャストの活用可能性を探る試みとして、音声番組『屋久島ポストの物語』を制作しました。本番組では、アメリカを中心に人気を集めているストーリー仕立ての音声コンテンツ(ナラティヴ・ポッドキャスト)の手法を参照しながら、報道する人の顔が見えるポッドキャストを目指しました。厳しい行政監視を続けるローカルメディア『屋久島ポスト』に関わる方々の熱い想いや穏やかな素顔を少しでも表現できていれば幸いです。
番組は、約6時間に及ぶ取材音源をもとに、1本20〜30分のエピソード4本、合計1時間25分に構成しています。制作を通して、あらかじめ構成をしっかりと組み立て、その上でスタジオで収録する必要性を実感しました。
本作品の制作を通じて、欧米で話題となっている「ナラティヴ・ジャーナリズム」と、権力監視型の報道との関係についても考察を深める機会となりました。日本においては、行政監視という営みが一般の人々にとって感情移入しにくい面があるようにも感じますが、音声メディアが持つ親密性や物語性を通じて、新たな共感、連帯の可能性を開くことができればと考えています。